Q28 私たちの労働条件はどのようにして決められるのですか

 ●憲法25条は、国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を有することを保障する一方、憲法28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利はこれを保障する」と定めています。これは、勤労者にとってのふさわしい待遇は、団結力と団体行動をする権利を背景にした団体交渉によってのみ実現できるものであり、そのことを権利として保障すべきであるとの考え方にたつものです。

●さらに、こうした憲法の理念を具体的に保障すべく制定された労働基準法も、1条1項で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」とし、2条1項で「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」ことを定めています。

●しかし、私たち公務員は地方公務員法58条で労働基準法2条は適用除外になっており、これに代わって「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」(地方公務員法24 条)としています。

私たちは地公労(埼玉県地方公務員労働組合共闘会議:埼教組・埼高教・県職)で県当局と交渉し、その合意した範囲で、自らの労働条件を決めています。

●埼教組のような「適法な職員団体」は、勤務条件に関して当局と交渉する権利が保障され、勤務時間内に交渉することも認められています。(地方公務員法55条1項、8項)条例、規則に抵触しない限り、書面による協定を結ぶことも出来ます。(同条9項)ですから、職場の労働条件について分会が校長と  交渉してこのようなことを行うのは当然のことです。

Q29 勤務日(勤務を要する日)と休日について教えてください

●週休日、学校職員の休日以外は「勤務を要する日」です。勤務を要する日に、勤務しない場合には以下のような休暇等の取得手続きが必要です。

①年次休暇

②病気休暇

③特別休暇

④組合休暇

⑤介護休暇及び介護時間

⑥職務専念義務免除(職専免)

●「休日」とは、日曜日などの「週休日」と「国民の祝日に関する法律に規定する休日」「12月29日から翌年の1月3日までの日」を指定して使われています。休日の中でも「週休日」と、条例に定められた「休日」(祝祭日など)とは厳密には異なります。「学校の開校記念日」は、2008年より休日とは認められなくなりました。(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例4条及び10条)

●「休日」には原則として勤務を命ぜられることはありませんが、特に勤務を命ぜられた場合、勤務することを命じた時間に相当する時間を休日後の勤務日等に割り振られた勤務時間中に指定しなければならないことになっています、(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例 11 条、同規則7条)

●「週休日」とは勤務時間を割り振らない日をいい、学校では日曜日、土曜日を指します。週休日は賃金支給の対象とされておらず、勤務を命じられた場合は代日休暇が与えられることになっています。(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例4条)

 ●「休業日」は、学校教育法施行規則47条及び「管理規則」によってきめられています。休業日は、授業等は行われず、通常、児童・生徒は登校しません。教職員にとって、休業日は、「勤務を要しない日」ではないので(週休日とは異なる)、賃金は支給されます。賃金が支払われる限りその使用従属関係が存在し、夏休み等の研修をめぐってトラブルがおこりやすくなっています。夏休み中でも必要な業務のある場合は出勤しますが、「休業日」は、教育対象である児童・生徒が登校しないので、教職員も自宅研修などを行うことができます。

●組合は、1971年7月1日、文部省(当時)との問で中央確認事項として、「休業日」を以下のようにあつかっています。夏休み中などの「日番」は、本来は教職員 の業務ではありませんが(校長・教頭などの業務である)、学校運営全体をその構成員である教職員としての立場も考慮して、そのあり方について検討することが重要です。

中央確認事項(1971.7.1)

 教職員の勤務時間管理については、教育が特に教職員の自発性・創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことおよび夏休みのように長期の学校休業期間であること等を考慮し、正規の勤務時間内であっても業務の種類・性質によっては、承認の下に学校外における勤務により処理しうるよう運用上配慮を加えるよう、また、いわゆる夏休み等の学校休業期間については教育公務員特例法第19条(現21条)(研修)および第20条(現22条)(研修の機会)の規定の趣旨に沿った活用を図れるように指導する。 

Q30 教職員の勤務時間(労働時間)はどのように定められていますか

●私たちの勤務時間は、労働基準法を根拠として「学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例」(以下「勤務時間条例」)と「学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則」できめられています。

●労働基準法32条は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」また同条2項で「休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」としています。

●「勤務時間条例」は3条で「学校職員の勤務時間は、休憩時間を除き、四週間を超えない期間につき一週間当たり三十八時間四十五分とする。」と原則を定めています。

 育児短時間勤務の承認を受けた学校職員については、3条2項で一週間あたりの勤務時間は、当該承認をうけた育児短時間勤務の内容に従い、県教委が定めるとしています。

 再任用短時間勤務職員については3条3項において、休憩時間を除き、四週間を越えない期間につき一週間当たり十五時間三十分から三十一時間までの範囲内で県教委が定め、任期付短時間勤務職員については、3条4項において四週間を越えない期間につき一週間当たり三十一時間までの範囲内で、県教委が定めるとしています。

また、学校職員については、4条2項で「月曜日から金曜日までの五日間において、一日につき七時間四十五分の勤務時間を割り振るものとする」と定めています。

Q31 勤務時間の割振りについて説明して下さい

●「勤務時間の割振り」は通常毎年度当初に、毎週恒常的に反復継続しておこなわれる正規の勤務時間をあらかじめ定めておくことです。その日の都合によって随時勤務時間を変更するのは、「勤務時間の割振り」ではありません。各市町村立小中学校管理規則によると「割振り」は、校長が行うものとなってい  ます。しかしこれは、その権限を校長が恣意的に且つ一方的に行使してよいということではありません。地方公務員法第55 条は「地方公共団体の当局は、登録を受けた職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関  し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。」と定めており、「割振り」および「割振り変更」は勤務条件そのものですので、分会と校長との交渉事項になります。

●2004年より導入された「割振り変更簿」の活用により、長時間過密労働を少しでも緩和することは、重要な手段です。県教委は、「教材研究・持ち帰り仕事以外は割振り変更の対象」と回答していますから、7時間45分の勤務時間からはみ出た部分については、変更簿に記入し後16週で調整することができます。

●通常の勤務時間の割振りを臨時に変更した場合にとられる措置を振替とよびます。大別して次の2通りとなります。

週休日等の割振り変更の運用について【別記】2020.3.31 教県第1090号
1 週休日の振替について
(1)週休日に勤務を命ずる場合には、原則として1日単位として勤務を命ずることとし、やむを得ない場合に限り4時間の勤務時間の割振り変更を行うこと。
(2)週休日の振替及び4時間の勤務時間の割振り変更は、原則として勤務を命ずることになる日を含む週内で行うこととし、やむを得ない場合は、勤務を命ずることになる日を起算日として、前4週後16週の期間で行うことができる。
(3)休憩時間をはさんだ前後の勤務時間の差が45分以内である場合には、当該休憩時間の前後のいずれか一方の勤務時間の全てを割振り変更することにより、4時間の割振り変更をしたものとみなす。
(4)休憩時間をはさんだ前後の勤務時間の差が45分以内である場合には、4時間の割振り変更2回を合わせて1日の週休日として振り返ることは差し支えない。ただし、週休日の振替を分割して、別々の日の午前又は午後の2回に振り返ることはできない。
(5)振替後の最振替はできない。つまり、週休日の振替を行った日に、改めて勤務を命ずることはできない。
(6)毎4週間につき、週休日が4日以上になること。
(7)4時間の勤務時間の割振り変更を行った日を含めた勤務日が引き続き24日を越えないこと。
2 勤務時間の割振り変更(いわゆる調整)について
(1)1日の勤務日において、勤務時間の割振り変更を行うことで、やむを得ず7時間45分を越えて勤務を命ずることができる用務は、校長からあらかじめ命じたものに限る。
(2)上記(1)の業務とは、職員会議や校務分掌に基づく会議用務、教務用務、生徒指導用務、旅行命令による用務、その他学校運営上必要な用務とする。
(3)7時間45分を越えて勤務を命ずる場合には、原則として1時間単位とすること。ただし、学校運営の必要に応じて30分単位でも差し支えない。
(4)勤務を命ずる日を含む週又は翌週で調整を行うこととし、やむを得ない場合は、週休日の振替期間を目安に調整を行うことができること。

●学校現場の実態の一つとして、「割振り変更簿」が十分に活用されていない実態や、周知徹底がなされていない実態があります。2020年3月19日、「学校職員の勤務時間、休憩等に関する条例の「改正」に関する要求書」に基づく地公労交渉の中で、県教委は以下のように回答しています。

割り振り変更(調整)の運用について理解が不十分な校長がいることから、改めて丁寧に説明するとともに適切に運用されているか把握し、必要に応じて指導・助言すること。

 (勤務時間の割振り変更(いわゆる調整)につきましては、県の条例に定めがないため、各市町村で要項を定め運用しているところです。
 また、学校職員の勤務時間管理につきましては、服務監督権者である市町村教育委員会と校長の重要な責務であります。1月の市町村教育委員会事務局職員研究協議会において、いわゆる調整に関する運用についての情報共有を図りました。しかしながら、運用についての管理職の理解が不十分であるというご指摘をいただいている現状を踏まえ、市町村教育委員会等を通じ、適正な運用が行われるよう丁寧に働きかけてまいります。

●2020年3月31日付け教県第1090号「週休日当の割振り変更の運用について(通知)」において、2020年4月1日から小中学校においては新たに以下の運用が加えられました。

「週休日当の割振り変更の運用について(通知)」(抜粋)

・考査の「採点」については、定期考査以外の名称で行われている「校内実力テスト」、「長期休業後の宿題・課題テスト」、「漢字・英単語小テスト」等の各種テストの採点、「レポート及び課題」の採点・評価、「各種作品」等の採点・評価等を含めて差し支えないこととしたこと。
・校長が勤務として認めた「資料の作成に係る業務」については、1日につき、1時間以内で調整の対象とすることができることとしたこと。
  なお、「資料の作成に係る業務」については、「業務のためのプリント等の作成」及び「資料の作成に係る一連の業務」を含めて差し支えないこと。 

Q32休憩時間はどのようになっていますか

●1日の勤務時間が6時間をこえる場合、業務の間に少なくとも45分の休憩時間をおかなければなりません。(勤務時間条例7条)

●休憩時間は給与支払い対象外の時間ですからまったく拘束を受けずに、一斉に、そして自由に利用させなければなりません。(労働基準法34条)

ただし書きとして、労働組合との書面による協定がある場合にのみ「この限りではない(分割付与も可能)」と定めています。従って、このような労基法の精神に反した運用はするべきではないでしょう。

●県教育長は1992年の県議会答弁で「児童生徒の在校中は休憩・休息時間がとりにくい」と現状の問題点を認めているところです。

●勤務時間の割振り上休憩時間がどこに配置されていても、実際に休憩が取れずに勤務を継続せざるを得なかった場合、勤務の始期から7時間45分が終了した時点で、その時点が割り振り上勤務時間中であったとしても、勤務は終了させなければなりません。8時30分勤務開始の場合、16時30分がその時刻に 当たります。このような学校現場の実状があるので、1976年に埼教組・埼高教と県教委の間で「勤務時間問題交渉メモ」が取り交わされ、ほとんどの職場で7時間45分を超える違法な勤務にならないために弾力的な運用がなされているのです。

●教職員定数の抜本的改善等がなされない限り、学校現場において労働基準法通りの休憩時間取得は非現実的です。一校の責任者たる校長は、とれもしない休憩を形式的において7時間45分を超える労働を強いてはなりません。むしろ教職員が安心して休憩を取れるために、定数増を含めた条件整備を地教委に強く具申することこそ求められているのです。

●通常の勤務日の勤務時間については、休憩時間の弾力的運用がはかられている学校・地域で、「長期休業中は子どもたちがいないのだから、休憩時間の運用ははかれない」とし、長期休業中の日直に8時間30分の勤務を命じる学校長がいます。そもそも「日直」なる勤務の形態は、学校の運営を円滑にすすめるために当該校の教職員の協議に基づく合意によって各教職員が分担してあたっている措置です。当然のことながら、長期休業中であっても、子どもたちや父母からの問い合わせや出入り、業者の搬入などの対応、教育委員会をはじめとした外からの連絡への対応など、休憩時間が割り振られていたとしても休憩がとりにくい状況はかわりません。こうした状況では、通常の運用をはかるのが当然です。

「休息時間廃止だから、お茶飲むな。こどもから離れるな」はありえない!

  「国においては民間の勤務時間制度との均衡などを理由として、休息時間を定めた人事院規則がすでに廃止された」として埼玉県は勤務条例を改定して2007年4月1日から「休息時間」を廃止しました。学校現場では休息時間がなくなると報道された途端「教室を離れるな・お茶を飲むな」と話す管理職の存在が報告されています。民間では「休息」という言葉はなくても、仕事の能率を高めるために「お茶の時間」は常識です。
 2007年1月19日の埼教連交渉で県教委は「休息時間廃止が労働強化につながらないよう、また直接教育課程に影響を及ぼすことがないよう、休息時間の実質的確保に向けた努力を含め、教職員の健康管理に十分に配慮するよう、条例改正通知や市町村教育委員会事務局研究協議会を通じて説明してまいりたい」と回答しています。休息時間はなくなっても、学校現場のさらなる過密労働は許されないことを明確にする確認が必要です。

Q33 「一年単位の変形労働時間制」とその問題点について教えてください

●2019年12月4日、都道府県・政令市の条例によって公立学校に「1年単位の変形労働時間制」を導入するための法案が、国会で可決されました。

●安倍元総理の突然の休校宣言からコロナ禍のなかで、国会での法案可決から動きが止まっていた「1年単位の変形労働時間制」に関して、7月17日の文科省通知で改正給特法における「休日のまとめ取り」のための1年単位の変形労働時間制についての、省令の制定及び指針の改正等について示されました。

●そもそもこの「1年単位の変形労働時間制」とは、平均した労働時間が1週間当たり40時間を超えないとすることを条件に、「業務の閑散に応じて労働時間を配分する」ことを認める制度です。時間外・休日労働を減少させ、「総労働時間の短縮」をすることが労基法上での目的です。文科省は手引きにも記載されているように休日の「まとめ取り」を目的としていますが本来の目的自体がそもそも違うのです。

一年単位の変形労働時間制とは
 公立学校の教育職員における休日の「まとめ取り」のための一年単位の変形労働時間制は、1箇月を超え1年以内の期間を平均して1週間あたりの正規の勤務時間が38時間45分となること等を条件として、業務の閑散に応じ勤務時間を配分することを認める制度です。また、本制度は、長期休業期間等において休日を集中して確保することを目的とする場合に限り適用することとしています。
 本制度の活用により所定の勤務時間を延長する日及び時間については、長期休業期間等の業務量の縮減によって確実に確保できる休日の日程を考慮し、確実に縮減できる範囲内で、年度当初や学校行事等で業務量が多い時期に限定することが必要です。 なお、本制度は、あくまで地方公共団体の判断により、条例等により選択的に導入できるものとなっています。


 文科省 初等中等教育局 初等中等教育企画課 作成公立学校の教職員における「休日のまとめ取り」のための1年単位の変形労働時間制〜導入の手引き〜より抜粋

●文科省は、長期休業期間中(8月)に5日程度(約40時間)の休日の「まとめ取り」を可能とするために、「業務等が繁忙な時期」(4,6,10,11月)の勤務を月10時間ずつ延長することを例示しています。

例えば、「1年単位の変形労働時間制」導入前では17時退勤であった勤務時間が「1年単位の変形労働時間制」導入後は勤務時間が延長され、18時となります。同じように学校にいたとしても、その時間は勤務時間となります。つまり拘束されるわけです。7時間45分の勤務時間が8時間を超えると休憩時間も60分となるので、始業から終業の時間はさらに伸びることにもなります。変形労働時間制が導入された場合、年休を取得して帰宅するしかありません。

文科省は、延長した勤務時間に職員会議などの新たな業務を付加しないことを言っていますが、実態を考えればそれはあまりに現実的ではありません。延長した勤務時間以降に自分の仕事をせざる状況になれば、今よりも長時間労働になりかねません。しかし、勤務時間を延長している分、時間外労働を覆い隠すものになってしまいます。

●もう一つ重大な問題は、この制度が労働者の勤務条件の重大な変更であることから、労働者と使用者が書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることになっているにもかかわらず、公立学校の教員は、その手続きによらず、都道府県・政令市の条例によって導入できるとしていることです。

これは、労働者の同意無しに1日8時間を超える労働を強制してよいということであり、明確に労働法の大原則に反することです。「教員を突破口にして、すべての労働者に広げるつもりかもしれない」「教員だけの問題ではない」と全国の教職員組合を中心とする団体が反対の声が上がりました。

●都道府県・政令市が以下の項目について「条例」と「規則」を定め、これにもとづき教育委員会と学校が導入を決めます。その際には、当然のことながら教職員の意向がしっかりと反映させなければならない。そしてこれは勤務条件に関わることですから、当然組合との交渉事項です。

組合員がいない場合については、教職員の代表が管理職と協議をすることになります。制度の対象者となる教職員は、基本的には職場内の教職員全員が対象となることも考えられますが、赤字で記載している通り、育児や介護を行う人への配慮や対象期間の最初から末日まで任用されるない方は対象とはなりません。

〈対象労働者の範囲〉
制度の対象者となる教職員は「教育委員会が必要と認めるもの」「ただし、育児や介護を行うものなどについては配慮をしなければならない」「対象期間の最初から末日まで任用される者」
〈対象期間〉
「1ヶ月を超えて1年以内」で「長期休業日を含み」、「各学校の実情に応じ、教育委員会が必要と認める期間」
〈特定期間(所定の勤務時間が延長される期間)〉
「各学校の実情に応じ、特に業務が繁忙であって教育委員会がやむを得ない必要があると認める期間」
〈勤務日及び当該勤務日ごとの勤務時間〉
制度導入時、または対象期間を1ヶ月以上の期間に区切り「各期間の初日の30日前まで」に定める

●制度導入に当たっての前提条件5つです。

〈制度導入に当たっての前提条件〉
1)対象期間に長期休暇等を含むこと
2)長期休業期間等に勤務時間が割り振られない日を連続して設定すること(=「休日のまとめ取り」)
3)育児や介護を行うものに配慮すること
4)対象期間中の「在校等時間」の時間外の上限は月42時間・年320時間とすること
5)教育委員会及び校長は、「指針」に定めた全ての措置を講じること

長時間過密労働が深刻な教職員ですが、4)の上限時間をクリアしている教員はどの程度いるのでしょうか。変形労働時間制対象者は対象期間の間、月45時間、年360時間の上限時間をさらに月42時間、年320時間に削減しなければなりません。

抜本的な業務負担軽減が進まない今、すでにこの上限時間設定だけでも導入することは不可能です。さらに5)にある「指針」に定めた全ての措置というのは次の〈教職員に関する措置〉と〈学校に関する措置〉です。

〈教職員に関する措置〉
①「在校等時間」の客観的な把握を行うこと
②部活動の休養日・活動時間がガイドラインの範囲内であること
③特定期間は「業務量の多い一部の時期」に限ること
④所定の勤務時間が延長される日に、新たな業務を付加して「在校等時間」を増加させないこと
⑤終業から始業までに一定の休憩時間を確保すること
〈学校に関する措置〉
①長期休業期間等の業務量の縮減を図ること
②職員会議、研修等の業務は通常の勤務時間内に行うこと
③育児や介護を行う者に配慮すること

特に〈学校に関する措置〉が取られていない場合には「1年単位の変形労働時間制」を導入することはできません。

●埼教組は2020年8月18日付けで公立学校に「1年単位の変形労働時間制」を導入しないよう求める要求書を提出し、9月1日に交渉を行いました。

この交渉では、「1年単位の変形労働時間制」を導入し、みなしの労働時間を削減するのではなく、「埼玉県 学校における働き方改革基本方針」に即した抜本的かつ速やかな業務負担軽減を行うことと、私たちの勤務条件であることから組合との交渉事項であることを確認しました。

交渉の際のやり取りの中で「仮に12月議会において「1年単位の変形労働時間制」に係わる議案が提出されたとしても、変形労働制の導入を検討していない教育課程を各校で編成していれば、当然変形労働制の導入は困難。」という回答を引き出しました。

●本部での交渉を皮切りに、各級段階での「1年単位の変形労働時間制」導入を許さないための申し入れのとりくみを埼教組一丸となって行い、市町村教育委員会や校長に申し入れを行ないました。

条例提案をさせないためにも、引き続き申し入れと世論づくりが極めて重要なとりくみとなります。

●埼教連は「教育職員の「1年単位の変形労働時間制」に関する要求書」に基づく交渉を3度にわたり実施しました。県教委は「1年単位の変形労働時間制」導入の前に、「働き方改革が最優先」としながらも、「導入した際の利点や課題を整理するとともに、他県の動向等を注視し対応」という回答を繰り返し、現場実態に即した私たちの声に正面から向き合おうとはしません。私たちの勤務条件に関わることであり、国や他県の動向は全く関係がありません。

Q34 教員の時間外勤務と給特法について説明してください

●労働基準法36条は「労働組合との書面による協定」(通称サブロク協定)がある場合に限って「その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」としています。そしてその場合、37条で「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で割増賃金を支払わなければならない」と定めています。

●教員の場合は労働基準法の適用除外とされ、1972年1月1日から施行された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」)6条で「教育職員(管理職手当を受ける者を除く)を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする」としています。この法律は「限定された4項目」(別項参照)に当てはまらない業務を所定労働時間外に命じてはならないという「時間外勤務原則禁止法」です。

●本給の4%に当たる教職調整額が支給されるからといって、この手当で無制限に時間外勤務が命じられるものではなく、臨時または緊急にやむを得ない必要がある時に限るものとなっています。つまり、予め計画して実施する場合はこれに該当しません。従って、予め計画されている修学旅行等の校外学習行事が行われる場合は、当然ながら代休及び超過時間分の回復措置が講じられなければなりません。

●調整時間について基準は特にありませんが、「児童生徒の起床時から就寝時までは勤務時間」「児童生徒の就寝以降も必要に応じて業務を行った場合は当然調整の対象となる」(2007年2月16日労安交渉)と県教委も見解を示しています。具体的には、児童生徒の起床時刻から就寝時刻までの時間および、深  夜業務の合計時間から所定内勤務時間としての7時間45分を引いた残りの時間が調整の対象となるべき時間です。割り振り権を持つ校長と弾力的に話し合って常識的な線で決めることが必要です。

●なお、修学旅行などには教員特殊業務手当が支給されますが、これも時間外勤務手当にかわるものではありません。従ってこの支給を根拠に時間調整をしないことはあり得ない話です。

●この法律(以下「給特法」)の運用に関しては、1971年、組合と県教委で以下のように確認されています。

①原則として時間外労働はない。

②時間外勤務を命じることができるのは臨時又は緊急にやむを得ないときで、かつ次の4項目に限定される。

ア.生徒の実習に関する業務

イ.学校行事に関する業務

ウ.職員会議に関する業務

エ.非常災害等やむを得ない場合に必要な業務

③「教職調整額」は、教員本来の職務の特殊性に着目して支給されるものであって、時間外勤務手当に代わるものではない。

(1994年6月の県議会で県教育長も「教職調整額は、教諭等について、その職務と勤務の特殊性に基づき支給される給与であり、一般行政職に支給される時間外勤務手当とはその性格を異にするもの」と明確に述べています。)

●文科省は、教育職員の勤務実態と教職調整額の在り方について検討を進めてきました。この「審議のまとめ」によれば、教職調整額の見直しは単に給与の問題に留まらず、教員の勤務時間管理や時間外における勤務の在り方等に直截影響し、これからの時代の学校の在り方等の幅広い検討が必要とされました。

 埼教組は、「給特法」が想定した教員の働き方が現状と乖離していることから、

 ①測定可能な時間外労働には時間外勤務手当を支給すること

 ②教育の特性として測定困難な時間外労働には定率の手当を支給すること、

という2本立て要求を掲げていました。

●2018年7月に交付された働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により、民間企業等についてはいわゆる36協定による時間外労働の上限規制が新たに規制されました。こうした流れから、2019年1月25日、文科省は「学校における働き方改革」の総合的な方策の一環として「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を示しました。

公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン【概要】(抜粋)
○趣旨
 限られた時間の中で、教師の専門性を生かしつつ、授業改善や児童生徒等に接する時間を十分確保し、教師が自らの授業を磨くとともにその人間性や創造性を高め、児童生徒等に対して効果的な教育活動を持続的に行うことをできる状況を作り出すことを目指して進められている「学校における働き方改革」の総合的な一環として制定するもの。
○対象者
 給特法第2条に規定する公立の義務教育諸学校等の教育職員 ※義務教育諸学校等:小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校…(略)  教育職員:校長(園長)、副校長(副園長)、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、…(略) ※事務職員等については、「36協定」の中で働き方改革推進法に定める時間外労働の規制が適用される。
○本ガイドラインにおける「勤務時間」の考え方
 「超勤4項目」以外の自主的・自発的な勤務も含め、外形的に把握することができる在校時間を対象とすることを基本とする。所定の勤務時間外に自発的に行う自己研鑽の校外での勤務についても、職務として行う研修や児童生徒の引率等の職務に従事している時間について外形的に把握し、これらを合わせて「在校等時間」として、本ガイドラインにおける「勤務時間」とする(休憩時間を除く)。
○上限時間の目安
①1か月の在校等時間について、超過勤務45時間以内 
②1年間の在校等時間につちえ、超過勤務360時間以内 
※児童生徒等に係る臨時的な特別の事情により勤務せざるを得ない場合は、1か月の超過勤務100時間未満、1年間の超過勤務720時間以内(連続する複数月の平均超過勤務80時間以内、かつ、超過勤務45時間超の月は年間6ヶ月まで)

●埼玉県では、これまでにも当局と埼教連の間で教職員の多忙化解消・負担軽減について議論を重ねてきました。

県教委は2018年8月に設置した「多忙化解消・負担軽減検討委員会」での議論を踏まえ、2019年9月に「埼玉県 学校における働き方改革基本方針(2019.9~2023.3)」を策定し、埼教組、埼高教もこの策定にかかわり、基本方針の「目標達成に向けた4つの視点」を示させました。

2019年度の埼教連交渉では、4つの視点の中でもとりわけ「教職員の専門性を踏まえた総業務量の削減」及び「教職員の負担軽減のための条件整備」として位置づけた項目を速やかに実行するよう県教委に対して求めました。

●2020年度の埼教連交渉では、「埼玉県 学校おける働き方改革基本方針」とこれまでの交渉経過を踏まえ、年次研修の廃止・縮小、小学校における文化的・体育的対外行事の廃止・縮小、教育施策の廃止・もしくは中止などを求め、さらなる多忙化解消・負担軽減の推進と総業務量の削減を強く求めました。

 また、2020年7月17日文科省通知「教諭等及び事務職員の標準的な職務の明確化に係る管理規則参考例の送付について(通知)」、「事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について(通知)」についても確認しました。

 これらの管理規則の改定は、学校教育法37条の「教諭は児童の教育をつかさどる」と定められたつかさどるべき「教育」の内容との関係が不明確であることや、事務職員の定数削減が続く中で、学校で担っている職務実態も踏まえられていないこと、更に学校現場における教職員と事務職員の仕事の連携にも全く考慮されていない点が問題です。教職員の勤務時間外に及ぶ仕事量が削減されないどころか、教職員間の協力・共同の関係を崩す可能性もあり、反対しています。

●教職員の長時間過密労働の問題を解決するには、教育予算を増やし、教職員定数の改善、教職員の増員、そして20人以下を展望とした少人数学級を実現することです。全教と連携を強めながら、幅広い市民や労働組合・民主団体とともに、教職員の長時間過密労働の改善のとりくみを強めています。

Q35 部活動と時間外勤務の関係はどうなっていますか

●1997年、全教(全日本教職員組合)は部活動問題のプロジェクトを立ち上げ、部活動の本来の姿は「子どもたちが自由に参加し、楽しむものであり、子どもたちの生活にゆとりと精神の自由をもたらし、生き生きと学習をうながすもの」だとして議論を呼びかけました。

中学校学習指導要領(抜粋)
第1章 総則
第5 学校運営上の留意事項
1 教育課程の改善と学校評価、教育課程外の活動との連携等
ウ 教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い、持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

●学習指導要領に記載があるように、本来、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加」によって行なわれるものです。しかし、現実には「勝つこと」が最優先される勝利至上主義に陥っているところや、子どもたちを強制加入させるなどという部活動本来の目的から外れている現状もあります。教職員の働き方からいえば、勤務時間外の活動が当たり前になっていると同時に、全員が顧問になるよう強制されるのは問題です。子どもたちや教職員にとって苦しいものとなっています。

●スポーツ庁が2018年3月に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定した動きに呼応する形で県教委は「埼玉県の部活動の在り方に関する方針」を策定しました。県方針では運動部に加え文化部も対象とした部活動全体の方針となっています。

 埼教組青年部では、部活動の教育的意義も踏まえつつも、部活動による恒常的な時間外労働の実態と、専門ではない部活の顧問強制などの問題から、部活動指導の社会体育への移行を求めています。2020年度の青年部交渉では、引き続き社会体育への移行を求めるとともに、すぐに実行できない場合は、「埼玉県の部活動の在り方に関する方針」の徹底を図るとともに、部活動指導員の全校配置を求めています。

●国は「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」を通知(2020年9月1日)しました。

 そこでは、「『学校と地域が協働・融合』した部活動の具体的な実現方法とスケジュールをとりまとめた」として、2023年から「部活動改革の全国展開」を行い、「休日部活動の段階的な地域移行」始めるとしています。また、それを推進していくために、「拠点校(地域)における実践研究」を2020年度から実施していくとしています。さらに、「休日の指導を希望する公立の教師については、兼職兼業の許可を得た上で地域部活動の運営主体の下で従事することが考えられる」という教師の職務にかかわる重要な内容も示されています。

 この「部活動改革」では、平日は「学校部活動」、休日は「地域部活動」とされており、大会・コンクール等への参加や責任の所在、活動・運営資金、指導体制等で混乱が生じるおそれがあります。また、「地域部活動」の費用負担については、「受益者負担の観点から、保護者が負担する」こととなっていることにも議論が不十分な部分があります。2020年11月16日、埼教連は「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」に関する要求書に基づく交渉を行い、今回の国の通知内容に関する、現時点で想定される課題を以下の項目で県教委に対して示しました。

 ①学校の部顧問と地域団体の担当者との指導上の連携

 ②土日の公式戦、練習試合の設定と引率、平日に行われる公式戦引率との関係

 ③事故が起きたときの対応

 ④保護者との連絡体制や責任の所在、費用負担など

 ⑤土日の練習場所の確保

 ⑥部活動ガイドラインの原則をどのように適用するか

 ⑦生徒への指導上の観点から、平日と土日の顧問の変更は、どのような影響がでるか

 ⑧以上の課題を、実情に基づいて中学校・高校・特別支援学校などの校種別の対応が必要

 ⑨拠点校における教職員の負担軽減策が必要

 この「部活動改革」は、当事者である生徒や保護者、学校現場で直接指導にあたっている教職員などの意見を十分に聞かず、合意形成もないままに、国からのトップダウンで示されたものであり、到底認めることはできず、埼教連として交渉し「スケジュールありきとせずに、市町村教育委員会と連携を図り、丁寧に進める」との回答を引き出しました。市町村の実態や当事者の意見をしっかりと聞き取り、時間をかけた丁寧な議論が部活動改革には必要です。

 Q36 休暇とは何ですか どんな種類の休暇がありますか

●学校職員の休暇は年次休暇、病気休暇、特別休暇、組合休暇、介護休暇及び介護時間に大別されます。休暇には有給のものと無給のものがあります。有給の休暇とは、正規の勤務時間中に給料の支給を受けて勤務しないもののことをいいます。年次休暇、病気休暇、特別休暇は有給で、組合休暇と介護休暇及び介護時間は無給で、介護時間については、その勤務しない一時間につき、職員の給与に関する条例第十八条第一項に規定する勤務一時間当たりの給与額が減額されます。(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例12条)

●有給休暇のうち、年休は認められる日数内で労働者の欲する時に、欲する期間認められる休暇であるのに対し、病気休暇や特別休暇は条例等で定められた一定の利用目的のために一定の日数を与えられるという点で異なります。従って、年休が使用者の承認を要せず具体的に成立するのに対し、病気休暇や特別休暇は任命権者もしくはその委任を受けた者の承認を必要とします。(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例18条)

Q37 特別休暇にはどんなものがありますか

●特別休暇の種類は次のものがあり、有給休暇となっています。(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例15 条、同規則12 条)。

※妊娠中の負担軽減についてはQ70・71、妊娠・出産にかかる休暇についてはQ69、生理休暇については、Q68参照。

※育児に関する休暇等については、Q39〜41参照。

(1)結婚休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の17)

●この休暇は、職員が婚姻関係(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情であるものを含む)に入ることが確実な場合に取得することができます。

●結婚生活にはいるための諸行事(挙式・旅行・婚姻届)をおこなうための休暇で、連続7日の範囲(週休日・休日・代休を含まない)で取得できます。

●おおむね結婚の日の5日前および結婚の日の後1か月を経過するまでの期間に取得が認められますが、職務が繁忙などの合理的な理由がある場合は結婚の日の後の最初の長期休業中にもとれます。

 「結婚の日」とは、社会的に結婚したと認められる日であり、「結婚式の日」「婚姻届提出日」等がこれにあたり、「結婚の日」とし得る日が複数ある場合、いずれの日を「結婚の日」とするかは、職員が選択することができます。

 なお、結婚式も行わず、婚姻届も提出しないような場合における「結婚の日」については、社会通念にもとづき個別に判断されるものとなっています。

(2)家族看護休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の7)

●学校職員が家族看護及び通院等の世話のために、勤務しないことが相当と認められた場合、1年に3日の範囲で休暇がとれます。介護休暇が日常的にはとりにくいと言う声から、2006年に新設されました。

●看護の内容は、負傷、疾病による治療、療養中の看護及び通院等の世話をいいます。負傷疾病とは、その程度や特定の症状に限るものではなく、風邪、発熱等含めてあらゆる負傷、疾病が含まれます。

 さらに、2020年度の地公労交渉で家族看護休暇の取得事由として、不妊治療(不育症も含みます)にかかわる診断結果や治療方針の説明の際の付き添いも対象としました。

●家族の範囲は次の通りです。

同居・別居ともの場合配偶者、父母、子(義務教育修了前までの子を除く)、配偶者の父母、祖母、孫、兄弟姉妹
同居の場合事実上の父母、事実上の子

※同居とは、看護のために同居する場合を含みます。

また、2015年度より祖父母、孫、兄弟姉妹の同居要件をはずしました。

●一日単位でも時間単位でも取得することができます。さらに、2019年度から30分単位の取得も可能となりました。

(3)忌引休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の10、別表第3)

●親族が死亡した場合、服喪のための休暇がとれます。死亡した者が、学校職員と生計を一にする姻族の場合は血族に準じます。配偶者は、届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情のある者を含みます。伯叔父母の配偶者は、当該伯叔父母に準じます。

●期間は次の通りです。

親族日数
配偶者10日
 血族姻族
一親等の直系尊属(父母)7日3日
一親等の直系卑属(子)7日1日
二親等の直系尊属(祖父母)3日1日
二親等の直系卑属(孫)1日
二親等の傍系者(兄弟姉妹)3日1日
三親等の傍系尊属(伯叔父母)1日

●休暇の開始は、申請に基づく日からで、葬祭のため遠隔地に赴く必要がある場合は、その往復に要する実日数を加算できます。

(4)父母等の追悼のための休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の11)

●配偶者・父母・子の追悼のための特別な行事のため、それぞれ1日の休暇がとれます。特別な行事とは法事等の行事を指すもので、単に命日というだけではとれません。

●「父母」とは、実父母及び養父母、「子」とは実子また養子に限られます。

●遠隔地に赴く場合は、往復に要する実日数を加算できます。

(5)夏期休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の12)

●夏季に心身の健康の維持・増進または家庭生活の充実のために勤務しないことが適当と認められる場合、1年に6月1日から9月30日までの期間内で5日の範囲内で休暇がとれます。

●2021年度より、会計年度任用職員については、週2日以上の勤務日数(複数校勤務であれば日数は合算)があれば、最低3日間の夏季休暇が付与されることになりました。

(6)災害又は交通機関の事故等のための交通遮断休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の14)

●地震・水害・火災・その他の災害・交通機関の事故等で出勤することが困難であると認められ場合の休暇です。その都度必要と認められる期間取ることができます。

●2020年3月4日付け教県第1042-1号「新型コロナウイルス感染症に係る職員の勤務時間等及び感染予防の徹底について(通知)」で、以下の場合において、2021年3月15日までの間、交通遮断休暇の対象であることが示されました。

 ①職員に風邪症状がある場合(濃厚接触者として停留を受けているあるいは就業制限等が行われている場合)

 ②職員の親族等に風邪症状がある場合

 ③濃厚接触者として停留の措置を受けている場合

 ④小学校、中学校等が臨時休業となり、子供の世話が必要な場合

(7)災害又は交通機関の事故等による危険回避のための休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の15)

●地震・水害・火災・その他の災害時等で退勤途上に身体の危険を回避するために勤務しないことがやむを得ないと認められる時の休暇です。その都度必要と認められる期間とることができます。

(8)災害等による、現住居復旧又は一時避難、水・食料等の確保のための休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の16)

●地震、水害、火災その他の災害により単身赴任手当の支給に係る配偶者等の現住居が消滅又は損壊した場合で、当該単身赴任手当の支給を受けている職員がその復旧作業等を行うときに、原則として連続する7日間として取得することができます。

(9)ドナー休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の20)

●骨髄移植のための骨髄若しくは末梢血幹細胞移植のための末梢血幹細胞(以下「骨髄等」)の提供希望者としてその登録に必要な検査又は骨髄等の提供に伴い必要な検査、入院等をする場合に、その都度必要と認める期間に取得することができます。

(10)献血休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の21)

●勤務校又は勤務校の所在する市町村内において献血をする場合に承認されます。

●この休暇の時間には、移動採血車等への往復に要する時間も含まれます。

●献血終了後、速やかに献血手帳の提示を行い、その事実を示すことが求められます。

(11)感染症に関する休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の13)

●感染症の予防、感染症の患者に対する医療に関する法律による交通の制限や遮断または健康診断があった場合、その都度必要と認められる期間とることができます。

(12)公民としての権利を行使するための休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の22)

●選挙権その他公民としての権利を行使する場合で、勤務しないことがやむを得ないと認められる時の休暇です。その都度必要と認められる期間とることができます。

(13)官公署へ出頭する場合の休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の23)

●職務に関して、証人、鑑定人、参考人等として国会、裁判所、地方公共団体の議会その他の官公署へ出頭する場合、勤務しないことがやむを得ないと認められる時の休暇です。その都度必要と認められる期間とることができます。

(14)ボランティア休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条の24)

●自発的に、報酬を得ないで社会貢献活動(専ら親族に対する支援となる活動を除く)を行う場合の休暇です。

ア.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条十一項に規定する障害者支援施設及びそれ以外の同条第一項に規定する障害福祉サービスを行う施設(ウ及びキに掲げる施設を除く。)、同条第二十七項に規定する地域活動支援センター並びに同条第二十八条に規定する福祉ホーム

イ.身体障害者福祉法第五条第一項に規定する身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設及び視聴覚障害者情報提供施設

ウ.児童福祉法第七条第一項に規定する障害児入所施設、児童発達支援センター及び児童心理治療施設並びに児童発達支援センター以外の同法第6条の二の二第二項及び第四項に規定する施設

エ.老人福祉法第五条の三に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム

オ.生活保護法第三十八条第一項に規定する救護施設、更生施設、医療保護施設及び授産施設

カ.介護保険法第八条第二十八項に規定する介護医療院

キ.医療法第一条の五第一項に規定する病院

ク.学校教育法第一条に規定する特別支援学校

ケ.アからクまでに掲げる施設のほか、身体上又は精神上の障害がある者の生徒指導、自立訓練、職業訓練等を目的と設置されている共同作業所等の施設のうち、利用定員がおおむね五人以上であり、かつ、利用者の作業指導等のための当該施設において常時勤務する者が置かれている施設

●暦年1年で5日の範囲で取得でき、半日(育児短時間勤務職員等、再任用短時間勤務職員及び任期付短時間勤務職員にあっては1日)単位の分割取得もできます。手続は、休暇届と活動計画書(期間・場所・内容など)を提出します。●2020年地公労交渉によって対象の活動範囲が広げられ、アスポート、フードドライブ等も対象となりました。

Q38 年休について説明してください

●年休は、労基法上は初年度10日とし、上限は20日となっています。私たちに、初年度から20日の年休が与えられているのは、1947年の文部省(当時)との間で交わした「労働協約」によるところが大きいのです。

●年休は「いつ」、「いかなる目的で」利用しようとも労働者の自由であることは確認されています。(1973年、全林野白石、国労郡山両事件最高裁判決)

●年休は、1年を通して20日で、1日または4時間(半日)を単位として与えることになっていますが、1時間単位でもとれます。7時間45分で1日に換算します。

●新採用者のその年における年休の日数は、次の通りです。

採用月123456789101112
休暇日数2018171513121087532

●臨時的任用職員の年次休暇は、任用期間に応じて取得できます。日数は次の通りです。

任用期間1月以内2月以内3月以内4月以内5月以内6月以内
日数2357810
任用期間7月以内8月以内9月以内10月以内11月以内12月以内
日数121315171820

 取扱いについては本務者と同じです。更新されたときには、更新後の任用期間に応じた年次休暇日数に、更新前に残日数が加えられます。

●非常勤講師の年次休暇は、週当たりの勤務日数と採用からの年数(任期が連続している場合)に応じて取得できます。日数は次の通りです。取得単位は1日です。

2校以上に勤務している場合は、各学校の勤務日の数に基づいて学校ごとに取得できます。

週当たり勤務日数1年間の所定の勤務日数 採用初年度2年度目3年度目4年度目5年度目6年度目
1日48日から72日まで122233
2日73日から120日まで344566
3日121日から168日まで5668910
4日169日から216日まで789101213
5日以上217日以上101112141618
週当たり勤務日数1年間の所定の勤務日数 7年度目8年度目9年度目10年度目11年度目12年度目
1日48日から72日まで333333
2日73日から120日まで777777
3日121日から168日まで111111111111
4日169日から216日まで151617181920
5日以上217日以上202020202020

 12年度目以上については同様の日数です。

●短時間勤務職員(育児短時間勤務職員等、再任用短時間勤務職員及び任期付短時間勤務職員)の年次休暇は、斉一型・不斉一型によって、付与日数と取得方法が異なります。

〈斉一型短時間勤務職員〉

 勤務日ごとの勤務時間が同一である場合の勤務形態を斉一型と言います。

1時間の勤務日数1日の勤務時間付与日数
5日4時間55分20日
5日3時間55分20日
5日2時間50分20日
3日7時間45分12日
2日7時間45分8日

 時間単位の年次休暇を日に換算する場合は、1日に勤務時間をもって1日となります。

〈不斉一型短時間勤務職員〉

勤務日によって勤務時間が変わる場合の勤務形態を不斉一型と言います。

1週間の勤務時間(平均)付与日数
16時間8日
20時間10日
24時間12日
28時間14日
31時間16日

 時間単位の年次休暇を日に換算する場合は、7時間45分をもって1日となります。

●年休は、所定の用紙を用いて、校長に届け出ることによって、効果が生じます(形成権)。しかし、校長は学校運営上職務の遂行に支障が認められる場合は、他の時季に変更することができます。

●年休の繰り越しは、前年の残日数を次の年に繰り越すことができます。繰り越された年休の日数は、翌年に限り有効で、最高20日となります。他県からの転入者は、引き続いたものとみなされます。(学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例13条、同規則8~10条)

(公立小中学校管理規則準則、公立小・中学校職員服務規程準則)     (年次休暇の取扱いについて(通知)昭48.10.25付)

(年休の計画取得)

●年休は形威権(具体的な年月日は、労働者の請求によって決まり、使用者の承認の有無は必要でない)であり、強制されて取るものではありませんが、小・中学校の職場では、年休の取得率がきわめて低いのが実態です。年休を取りやすい環境を整備し、年休の行使率を向上させるために、1996年4月から「年休の計画的取得」が実施されました。この制度は、各学校でよく話し合って、各自が学期ごとに2日程度、年休を計画的に取得するものです。強制されたり、義務づけられるものではなく、年休をみんなが気がねなく取得できるようにするためのものです。

●実施状況は管理職の姿勢や職場の状況によってちがいがあります。職場全体の合意をつくって実施したところでは、リフレッシュするために気がねなく年休を行使できてよいとの声も聞かれます。結婚記念日や家族の誕生日などにとることもよいでしょう。教職員定数増など教育条件整備のとりくみを強めるとともに、職場での民主的な協議と協力で年休の行使率を高め、有効に活用できるよう組合としてもとりくむことが大切です。

Q39 子の出産・育児のための休暇にはどんなものがありますか

(1)出産補助休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条15項)

●教職員の妻の出産(妊娠4ヵ月以上の分娩)にあたり、夫である男性教職員は3日の範囲内で、そのつど必要と認める期間、休暇がとれます。

●1日を単位とし連続してもよいし、分割してもよいことになっています。出産当日から2週間以内にとることを原則としています。連続してとる場合、日曜日も含まれますので、1日ずつわけてとるとよいでしょう。

●1日単位でも、1時間単位でも取得できます。1時間単位とする場合は7時間45分を持って1日と計算します。

(2)男性職員の育児参加のための休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条19項)

●妻が出産するとき、その出産予定日の6週間前の日から出産の日から8週間までの期間に、当該出産にかかる子または小学校の始期に達するまでの子を養育するための休暇です。多胎妊娠の場合は14週前から認められます。

●子と同居している必要があります。

●必要と認められたときに5日の範囲で取得できます。1日単位でも時間単位でも取得できます。

(3)育児休暇(育児時間)

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則第12条5項)

●生後2年に達しない生児を育てる男女職員は、勤務時間中、休憩時間の他に、1日2回、1日を通じて90分を超えない範囲で育児のための時間をとることができます。

朝45分、夕方45分と、2回にわけてもとれますし、まとめて90分、朝か帰りにとることもできます。30分と60分の組み合わせもできます。夫が朝45分、妻が帰りに45分と、分けてとることもできます。

●生児の母親が育てることができる場合(勤めていない場合)、男性教職員は取得できません。ただし女性職員は配偶者が勤めていなくても取得できます。

●原則として1月単位で、または承認をあてることができる限度期間までを一括して申し出ます。

●なお、「部分休業」(1日2時間、無給)も認められています。育児休業の項(Q40参照)を参照してください。

(4)子育て休暇

(学校職員の勤務時間・休暇に関する規則12条の6)

●義務教育終了前までの子(配偶者の子を含む)を養育する学校職員が、その子の看護や学校行事等に出席するために、勤務しないことが相当であると認められた場合、1年に7日(義務教育終了前までの子2人以上の場合には10日)の範囲で休暇がとれます。

●看護する「疾病・負傷」には、風邪・発熱などあらゆる疾病・負傷が含まれます。医師の診断書等の提出は必要ありません。実際に職員が子の看護を行う必要があればとることができます。後遺障害の機能回復訓練の介助、健康診断または予防接種のための付き添いも認められます。

●子が在籍する学校(園)等が実施する行事に出席する場合、学校(園)等からの通知を添えて申し出ます。学校行事とは、入学(園)式・卒業(園)式、授業(保育)参観、運動会・学習発表会、家庭訪問、保護者説明会(入学・入園説明会) 、引き渡し訓練、子が在籍する学校等から保護者へ引き渡しをいいます。高等学校又は教育委員会が実施する保護者説明会も対象となりました。

●2010年1月から義務教育終了前の子が2人以上いる場合、10日の範囲になりました。1人に月5日とするものではありません。

●2012年度より、子どもは実子、養子、配偶者の子に加え、里子も含めることとなりました。

●2021年度より、一日単位、時間単位に加え、30分単位でも取得することができることとなりました。

Q40 育児休業について説明してください

●すべての労働者に育児休業の取得を制度化した「育児休業等に関する法律」が1992年4月1日に施行されました。この法律は民間と公務員の法に大別され、私たちは「地方公務員の育児休業等に関する法律」が適用されます。

●3歳に満たない子を養育する男女教職員(非常勤職員・臨時的職員等は除く)がとれます。子とは実子・養子で法律上の親子関係のある者ですが、未婚の母・認知した未婚の父も同居・養育していれば可能です。配偶者が「子を常態として養育することができる場合」には育児休業はできません。配偶者が負傷・疾病で子を養育できない場合や産前6週産後8週の期間は、夫は育児休業をとることができます。

●原則として育児休業を開始する1カ月前までに請求します。特別の事情のある場合を除き、1回に限り延長することができます。育児休業中に産前休暇が始まった場合や子の死亡・養子縁組などで養育しなくなったとき、育児休業は終了します。一度育児休業を取ったあと、再度育児休業をとることは、育児休  業中に妊娠し流産した場合、配偶者の負傷、疾病・別居、予測することができない事情が生じたときなど、特別の事情がある場合にはできます。

●両親が育児休業計画書によって申し出れば、両親が交互に育児休業を取得することができます。(1回が3ヶ月以上)

●休業中の身分・地位は継続され、原職復帰が保障されます。育児休業中は、代替の配置がされます。

●賃金については、第4条で「給与を支給しない」と定めています。 わたしたちの長年の求めにより、2017年10月より、総務省令により2歳に達するまで育児休業手当金が公立学校共済組合から支払われることになりました。しかし、総務省は「保育所における保育の実施を希望し、申し込みを行っているが、当該子が1歳6ヶ月に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合」との定めを設け、算定された給付日額に、雇用保険と横並びの上限を設定しました。手当金の引き上げとともに、県及び国の負担で所得保障をするよう求めていきます。

〔育児休業手当金〕

●育児休業手当金は、育児休業の承認を受けて学校等を休むときに、子が1歳(注記1)に達するまでの育児休業期間中の所得を保障するための給付です。

注記1:
 パパ・ママ育休プラスに該当するときは、1年を限度に1歳2カ月まで、保育所に入れない等特別な事情に該当するときは最長2歳までとなります。
  特別な事情に該当したことによる給付期間の延長については、まず、子が1歳に達した日後について、特別な事情に該当する場合に1歳6カ月まで、子が1歳6カ月に達した日後について、なお特別な事情に該当する場合に2歳までとなります。

〈パパ・ママ育休プラスによる給付期間の延長について〉

2010年6月30日から、男性の育児参加を促進する観点から始まった、父母がともに育児休業を取得した場合の育児休業期間の延長制度(パパママ育休プラス)の導入に伴い、育児休業手当金の給付期間も延長されるようになりました。

  配偶者が子どもの1歳の誕生日の前日までに育児休業(父母ともに同一の子どもに対する育児休業に限ります。)を取得している場合、子どもが1歳2カ月になるまでの間に最大1年(給付期間の上限は、父親の場合は1年間、母親の場合は産後休業期間を含め1年間となります。)まで育児休業手当金が給付されます。

特別な事情に該当するとき
1育児休業に係る子について、保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、当該子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
2 常態として育児休業に係る子の養育を行っている配偶者であって、当該子が1歳に達する日後の期間について、常態として子の養育を行う予定であったものが次のいずれかに該当した場合
ア  死亡したとき
イ  負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により育児休業に係る子を養育することが困難な状態になったとき
ウ  婚姻の解消その他の事情により配偶者が育児休業に係る子と同居しないこととなったとき
エ  6週間(多胎妊娠の場合14週間)以内に出産する予定であるかまたは産後8週間を経過しないとき

〈給付額〉                                      

勤務しなかった期間1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の22分の1の額)の50%(育児休業開始から180日に達するまでの間は67%)。

  ただし、報酬が支給されているときは、その額を控除した額となります。なお、1日あたりの給付上限相当額は、雇用保険法に定める額に相当する額に30を乗じて得た額の50%(または67%)に相当する額を22で除して得た額となります。

給付率50%の場合の給付上限相当額
期間給付上限相当額
2016.8~2017.79,647円
2017.8~2018.710,165円
2018.8~2019.310,220円
2019.3~2019.710,234円
2019.8~2020.710,322円
2020.8~10,370円
給付率67%の場合の給付上限相当額
期間給付上限相当額
2016.8~2017.712,927円
2017.8~2018.713,622円
2018.8~2019.313,695円
2019.3~2019.713,713円
2019.8~2020.713,832円
2020.8~13,896円
育休の短縮
 「育児休業期間は学校運営や代員との関係で短縮を指導できる」という校長がいますが、正しくありません。育児休業法で「当該請求に係わる期間について当該請求した職員の業務を処理するための措置を講ずることが著しく困難である場合を除き、これを承認しなければならない」としているのは、僻地・離島などの1人職場もあるなかで公務サービス上の必要から入れたものですが、その場合でも代員確保等で承認が原則であると人事院は回答しています。つまり、承認しない場合は1人職場等で代員も困難な場合などきわめて限定した場合を想定しており、学期の始業・終業など学校運営や代員が来ないなどの理由で任命権者が短縮を指導することはできません。また、「職員の育児休業等に関する条例」第5条では、育児休業の承認の取り消し事由として「育児休業に係わる子を職員以外の当該子の親が常態として養育することができることとなったこととする」と明記しており、これ以外の理由での承認取り消しはないわけです。

Q41 育児短時間勤務制度について教えてください

●この制度は常勤職員のまま、子どもの就学前までの間、職務を部分的に離れて子育てを行うことができる仕組みです。国が2007年8月1日から実施したことを受けて、埼玉県でも「育児短時間勤務制度」についての条例を定め、2008年4月1日から実施された制度です。「育児と仕事の両立」の実現のために必要とされるものです。

●学校職員は、常勤職員のまま、小学校就学の始期に達するまでの子を養育するために、希望する日及び時間帯において勤務することができます。(地方公務員の育児休業等に関する条例第10条、学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則第12条)

●教職員の場合、次のうち一つのパターンを選び、勤務します。

 ①1日3時間55分(週19時間35分)

 ②1日4時間55分(週24時間45分)

 ③週3日(週23時間15分)

 ④週3日(うち1日は3時間55分で週19時間25分)

●給与については勤務時間に応じた額となります。

●育児短時間勤務の開始希望日の1月前までに校長に承認請求書を提出します。承認期間は、一月以上一年以下です。延長を希望する場合は勤務終了までに再度承認請求書を提出します。原則として、育児短時間勤務の終了後、1年間は育児短時間勤務をすることはできません。

●妻と夫が同時に育児短時間勤務をすることも可能です。

●後補充として、勤務しない時間に相当する時間で任期付短時間勤務職員が配置されます。本務者と後補充者の勤務については、学校の裁量で重なる時間帯を作ってもかまいません。学校現場では、引き継ぎは必要なため、後補充者の労働時間を制度取得者の労働時間の残を上回るものとすることを要求しています。

●年休や子育て休暇、家族看護休暇などの特別休暇はすべて取得できますが、勤務日数や勤務時間に合わせた時間となります。

 例えば、1日3時間55分勤務の場合、子育て休暇は7日とれますが、1日は3時間55分となります。

●育児休暇は、1日の勤務時間が4時間以下の日は30分、4時間を越える日は60分(2回に分割できます)となります。

〈部分休業〉

子を養育するため、子どもの就学前までの間、1日の勤務時間の一部について勤務しないことを請求することができます。ただし、無給で、勤務1時間当たりの賃金が減額されます。部分休業は、正規の勤務時間の始めまたは終わりに、1日に2時間を上限として30分単位とするとしています。育児休暇をとった場合は2時間から減じます。非常勤職員や配偶者等が育児休業をとっている場合はとれません。また、育児短時間勤務と同時にとることはできません。

〈育児または介護を行う学校職員の時間外勤務の制限〉

 小学校就学前の子のいる学校職員、要介護者を介護する学校職員からの請求があった場合、一月について24時間、一年について150時間を越えての時間外勤務をさせてはならないことになっています。

 育児介護休業法の改正に沿って、配偶者が育児または介護ができる場合でも請求することができるようになりました。また、3歳未満の子のいる学校職員から請求があった場合は、原則として時間外勤務をさせてはならないことになりました。

Q42 介護休暇について説明してください

●負傷、疾病または老齢により1週間以上の期間にわたり日常生活を営むのに支障がある者の介護をするために介護休暇をとることができます。この場合、介護休暇を希望する本人が1週間以上とる義務づけはありません。

●介護者の範囲は、同居の有無を問わず、配偶者、父母、配偶者の父母、子、同居であれば、祖父母、兄弟姉妹、父母の配偶者、配偶者の父母の配偶者、子の配偶者、配偶者の子、孫(父母のいずれも死亡している場合)も認められます。

●「介護」とは、食事、入浴、着替え、排泄等の身の回りの世話を行うことをいいます。子どもの不登校等の場合も含まれます。介護はひとりでは担いきれない場合がありますので、職員以外に介護することが可能である者がいる場合でも、実際に介護する必要があるか否かで判断されます。完全介護の病院に入院している場合も同様です。要介護者が完全看護の病院に入院している場合は認めないという校長がいますが、病状等によって介護の必要があるか否かで判断されます。

●要介護者各々につき介護を必要とする状態ごとに通産して六月を超えない範囲で取得できます。六月を限度として最大3分割して再取得できます。

●介護休暇をとり、いったん介護を必要とする状態が終結した後、また新たな負傷、疾病により介護が必要となった場合はあらたな介護休暇を取得できます。

●疾病の有無、疾病の種別、病気の重複あるいは先天性か後天性かにより介護休暇を判断するものではありません。

●休暇の単位は1日又は1時間とします。1日4時間を越すと1日として計算されます。

●短期介護休暇については2020年度地公労交渉において、30分単位での休暇取得も可能であることを確認しました。

●介護休暇の期間の計算には週休日、学校職員の休日及び休日の代休を含みますが、職員の給料支給などにおける介護休暇の取得日数にはそれらは含みません。

●通算して六月を越えない範囲内で再取得する場合は、再取得する日の一週間前までに介護休暇の請求を行います。

●証明書は通常不要です。その事由を確認する必要があると教育委員会が認めるときは証明書類の提出を求めることもあります。(※診断書や住民票を提出するように言う校長がいますが、通常は介護休暇簿で申請します。)

●一ヶ月以上の連続取得者には代替者が配置されます。

●介護期間中に要介護者が死亡した場合、代替者は発令事由を失いますが、引き続き忌引休暇の末日まで勤務することが運用で認められています。

●賃金については以下の通りです。

 ①給料・地域手当:勤務しない1時間につき1時間あたりの給与額減

 ②期末手当:介護休暇の期間は除算しない。

 ③勤勉手当:介護休暇の期間から週休日等を除いた日が30日までは除算しない。30日を越える場合は、全介護休暇期間を勤務時間から除算する。

 ④通勤手当:一日でも通勤した日があれば支給する。

 ⑤扶養手当:住居手当・管理職手当・僻地手当は支給

 ⑥退職手当:介護休暇の期間も通算

※共済組合から介護休業手当金・互助会から介護休暇給付金が支給されます。

※介護休暇期間の2分の1を勤務したものとみなして昇給します。

〈介護時間〉

 要介護者の介護(食事の介助、通所介護施設への送迎等)をするため勤務しないことが相当であるとき、連続3年の期間、始業又は終業の時刻に連続して2時間の範囲内でとることができます。介護時間を受けようとするときは、介護時間簿を持って校長に願い出ます。1時間につき1時間あたりの給与が減額されます。

Q43 病気休暇について説明してください

●負傷または疾病のため療養する必要がある場合、90日の範囲で、病気休暇をとることができます。教職員については、「医師の証明等に基づき、療養のため勤務しないことがやむを得ないと認められる期間、必要に応じて1日又は1時間を単位とすることができる」となっています。

●病気休暇は、「休暇願」の提出だけでとることができ引き続き連続8日以上の病気休暇取得の際に医師の診断書等が必要になります。8日未満の場合は病気の旨を報告すれば取得できます。

●病気休暇の前一月間に通算5日以上の病気休暇を使用しているときには、医師の証明書等が必要となります。しかし、処方薬袋や病院等の領収書、家族または管理職による証明書でもかまいません。

●1日、1時間単位でとれるものですから、風邪や発熱等病気のときは、年休でなく病休の申し出をしましょう。

●病気休暇は90日と定められています。病休1ヶ月以上で代替教職員(県費)が配置されます。3ヶ月以上になる場合は病気休職になります。

●ただし、休暇をとった日が30日をこえると勤勉手当が減額されます。

●病気休暇90日を越えた日から給与は半額に減額されます。しかし、公立学校共済組合の疾病手当金の支給により、1年6ヶ月間、給料の8割程度は保障されます。

●結核性疾患の病気休暇は90日間となりますが、その後の病気休職中(3年間)は現行通りに給与の全額が支給されます。

●連続8日以上の病気休暇を取得した場合、病休通算判定期間(クーリング期間)以内に再度の病気休暇を取得した場合は、病気休暇の期間を通算することとなります。部分休業や育児休暇、通勤緩和休暇、妊娠中の休息や捕食の職専免などは対象となりません。

●人工透析など定期的な通院加療のための病気休暇については、特例的に通算はしません。

●これまで公務災害・通勤災害による病気休暇は90日であり、その後は病気休職へと移行していました。しかし、上限が取り払われ「療養に必要な期間」となりました。

●条件付採用期間中の教職員(初任者)と臨時的任用教職員には休職制度の適用がなく、病気休暇90日間の取得後は、自主退職せざるを得ませんでした。しかし、2011年度の病休制度の改定で90日間の上限は取り払われ「療養に必要な期間」となり、働き続けられる道がひらけました。

●2020年度の地公労交渉において、不妊治療に係る以下の内容を獲得しました。

不妊治療に係る改善項目
①不妊症に係る病気休暇について、不妊検査のための通院や不妊症と診断された後の薬の受領のための通院も病気休暇として認められるようになった。
②不妊症に加え、不育症に係る治療についても病気休暇の対象とした
③不妊症、不育症に係る病気休暇について、他の病気休暇と同様に、1回の休暇の請求が連続して7日を超えない場合には、診断書の提出は必要しないこととなった。
④7日を越える不妊症に係る病気休暇を申請する場合、診断書ではなく、より簡易な様式である、不妊治療連絡カードでも可となった。

Q44 リフレッシュ休暇について説明してください

●勤続10年、20年および30年に達した年度の翌年度の4月1日~3月31日までに取ることのできる職専免(長期勤続職員の職務専念義務免除)のことです。ただし、この間に利用できない事情がある場合は、1年間に限り延長することができます。

●勤続11年目に2日、21年目に3日、31年目に5日取れます。勤続年数には臨時的任用教職員としての在職期間は通算されます。

●この「リフレッシュ休暇」に引き続き年休等を利用して、長期の休暇をとることができます。もちろん課業日海外研修等(海外旅行)も認められています。職場の協力を得て、ゆっくり休み、リフレッシュしましょう。

●2020年度の地公労交渉で、21年目の3日間の休暇を分割取得(連続2日+残り1日)、31年目の5日間の休暇を分割取得(連続3日+残り2日)することができるようになりました。

Q45 ライフプラン休暇について説明してください

●当該年度に満54歳になる教職員は、ライフプラン休暇をとることができます。

●ライフプラン休暇とは、ベテラン教職員が自らの生涯生活設計の充実を図るため、自発的な計画に基づき、健康の維持増進、余暇活動、生涯学習活動及び地域活動等を行うために取得する連続した休暇のことをいいます。

●年休3日以上を含む連続した5日間以上の休暇(夏季休暇、週休日、学校職員の休日を含む)です。休暇を取得した教職員互助会会員については、所定の手続きにより、5000円が付与されます。